『もの食う人びと』辺見 庸
人は今、何をどう食べているのか、どれほど食えないのか…。どんな世界でもどんな人でもものを食べる。飽食の国に苛立ち、著者は異境へと旅立つ。
中学生の頃の愛読書。久しぶりに読み消してみたけれどだいぶ鼻につく文章だと感じた。ルポライターにありがちな自分に酔った余計な一文に萎えることも何度か。著者が訪れない翌日に家でひとり食事をするだろう老女の話は中学生の私に消えない傷を付けたのだった。
『図説 英国王室の食卓史』スーザン・グルーム
王室ならではの贅を尽くした食事風景から、戦時下は庶民と同様に食糧配給切符をもっていた暮らしまで。英国王室の食文化の変遷を貴重図版とともに解説。
人々に見られながらの食卓なんて、さながら動物園の動物と変わらない。そんな時代の王室とは一般の人たちにとってどんな存在だったのだろうか。敬うとはどこか違うような。
『世界台所博物館』宮崎 玲子
竈、鍋、火の扱い方などから見える各国の風俗
寒い地域は鍋を上から吊って火の勢いをなくないようにする。逆に暑い地域は火が外に出ないよう、火の上に鍋を置く形にする。これを知ってなるほど!と興奮した。竈の上に寝室を作るなど知らない、面白い話だらけ。
『冷血 上』
『冷血 下』高村 薫
2002年クリスマス前夜に発生した「医師一家殺人事件」。衝動のままATMを破壊し、通りすがりのコンビニを襲い、目についた住宅に侵入、一家殺害という凶行におよんだ犯人たち。彼らはいったいどういう人間か?何のために一家を殺害したのか。
犯人の思考、行動を書き連ねる形の第一章がとにかく苦手で読み進めるのに苦労したけど第二章に入った途端に勢いが増し、私もいつの間にか夢中で読んでいた。そのまま下巻まで読み進めるうちに、なるほど第一章の必要性が分かる。読了後はもう一度、第一章を読み返したいという気持ちになった。世田谷の事件がベースになっているという話を見たけど、世田谷の事件の犯人の行動の異様さがこのような形となったのだろうか。
『古代中国の24時間』柿沼 陽平
始皇帝、項羽と劉邦、武帝ら英雄が活躍した中国の秦漢時代。中国史家である著者が資料を読み込み今から二千年前の人々の一日を解説する
冒頭のロールプレイング設定は必要だったのかな?それにしてもこういった類の本としては本当に読みやすかった。あとがきにも書かれていたけれど、できるだけ文章を易しくするよう工夫したらしく私のような読者には大変助かる。劉備玄徳、劉 備で氏名、玄徳は字なんだって。へえ!
『われら』エヴゲーニイ・ザミャーチン
「単一国」に統治された世界で、監視下に置かれながら人々は日々決まった生活を送る。それに疑問を持つことなく誇らしくさえ思っていた主人公がひとりの魅力的な女性に恋をしてしまう。
いわゆるディストピア小説であり、また、著者の祖国であるソ連では発禁になっていたといういわくつきの小説でもある。書いてあることの半分も理解できたかどうかは怪しい。ただ、その女性Iがいわゆるファムファタル的な描かれ方だったものの、善の描かれ方ではなかったところが興味深いと思った。
『QED源氏の神霊』高田 崇史
『QED出雲神伝説』高田 崇史
ともに再読。
『ルポ 座間9人殺害事件 被害者はなぜ引き寄せられたのか』浅井 哲也
犯人との面会、裁判の全容、10人目に憧れた人の声をもとに事件が起きた原因を両面から再検証する。
面会内容も浅く、核心に迫ったような質問ができる前に面会自体ができなくなっているため、良くも悪くもほぼ公表されている内容が書かれている。
『被害者のふりをせずにはいられない人』片田 珠美
「被害者ならば何をしても許される」そう思い込んで被害者のふりをする人が、いま社会に蔓延している。彼らはなぜ被害者を装うとするのか、またそういった人たちに狙われないためにどうすればいいのか。精神科医が解き明かす。
「解き明かす」というか、世間ば話を聞かされているような内容。直接診察をしていないであろうテレビの中の人たちをああいう風に書いていいものなのか等と思う。ただ「自分も気を付けなくてはいけないこと」であることは間違いない。